近年、展示会に出展する企業の間で「動画を活用する」のが当たり前になってきました。
会場では、多くのブースでモニターが設置され、各社の製品紹介や導入事例、ブランドムービーなどがループ再生されています。来場者の目に“動き”で訴えられるという点で、動画はチラシやポスターよりも強い訴求力を持つメディアです。
特にここ数年で、オンライン展示会やハイブリッド開催が一般化し、対面の時間が短くなったこともあり、「限られた接点の中で、いかに自社の魅力を伝えるか」がより重要になってきました。動画はその課題に応える、有力なソリューションとして注目されています。
とはいえ、動画を用意すれば成果につながるかと言うと、そう簡単ではありません。
「とりあえず会社紹介を流しておこう」「既存のPR動画を編集しておけばいいかな」といった姿勢では、来場者の足を止めることも、記憶に残すことも難しいでしょう。
そこでこの記事では、初めて展示会動画を検討する企業の方に向けて、よくある疑問を取り上げながら、失敗を避けるための基本的な考え方や制作のヒントをお伝えします。
はじめてだからこそ、迷うポイントを一つずつ丁寧に。
展示会の成果を最大化する“はじめの一歩”として、ぜひお役立てください。
筆者のプロフィール
まず、この記事を読んでいただくにあたって「誰が何を書いているのか?」も非常に重要な要素になると思いますので、簡単に私のプロフィールをまとめています。

【株式会社case 代表取締役/動画制作プロデューサー:加藤智史】
新卒で入社した動画制作会社で広告・マーケティング・採用・人材研修など約400本の動画制作に携わる。その後、TVCMなどの制作を行う、大手制作会社にアカウントエグゼクティブとしてジョイン。数千万円規模のプロモーション案件に携わり、動画にとどまらないクリエイティブ制作やプロジェクトマネジメントを経験。現在は本メディアの運営を通じた企業動画の受託制作や、動画制作会社の営業支援などを行う。
動画制作会社(予算数十万円〜数百万円)での営業兼プロデューサーとしての役割を中心に、広告代理店(予算数百万円〜数千万円)でのアカウント(クライアントと社内クリエイティブチームの窓口、PM業務を担当する役割)なども経験しているため、比較的高い説得力で本記事をお届けできるのではないかと考えています。
1. よくある疑問①:「展示会に動画って本当に必要?」

「展示会に動画って、あったほうがいいの?」「なくても何とかなるのでは?」
初めて展示会動画を検討する際、多くの方が感じる疑問です。
たしかに、展示会ではチラシやパネルなど他にも訴求手段がありますし、営業スタッフのトークで補える部分も多いかもしれません。ですが、動画は“賑やかし”ではなく、成果を生む装置として機能させることができます。
動画がもたらす3つの価値
- 視覚訴求力で「足を止める」
通路を歩く来場者の視界に“動き”が飛び込むことで、無意識のうちに注目を集めることができます。 来場者の足をとめることで、声をかけるきっかけにもなります。また来場者としても、動画を会話のきっかけにしやすく、よりスムーズに会話をスタートしやすくなります。 - 説明を「代弁」するツール
1分間の動画には、およそ180〜200語程度の情報を盛り込めます。製品の使い方や導入効果など、言葉だけでは伝わりにくいことも、動画であれば一瞬で理解させることが可能です。 - 印象を「記憶に残す」設計ができる
映像・音・動き・テキストなど複数の要素を組み合わせることで、“体験としての記憶”に残すことができます。展示会後のフォローでも「例の動画の会社だ」と思い出してもらえる確率が上がります。筆者も実際に「〜〜という感じの動画を流していたブースの会社です」と展示会後のフォローコールに使っていたことがありますが、覚えてもらえてることが多くありました。
2. よくある疑問②:「何をどう伝えればいいの?」
展示会動画をつくるにあたって、もっとも多くの方がつまずくのが「何をどう伝えるか?」という部分です。
せっかく予算をかけて動画をつくっても、伝える順番や中身を間違えると、伝えたいことが届かず、“なんとなく流れて終わる映像”になってしまいます。
動画制作の成否を分けるのは、「構成=伝え方の設計」です。
構成の基本:誰に/何を/どの順で伝えるか
まず整理すべきは、次の3点です。
- 誰に(どんな業種・役職・課題を持つ人に向けて)
- 何を(自社の何を伝えたいのか)
- どの順で(伝えたいことがスムーズに届く順番)
この3つを言語化することで、動画全体の設計図が見えてきます。
たとえば、ターゲットが「製造業の購買担当」で、伝えたいのが「調達コスト削減に寄与する新サービス」であれば、構成は次のようになります。
- 業界で共通する“あるある”課題(フック)
- 自社サービスでその課題をどう解決できるか(価値)
- 実際の導入事例や成果(証拠)
- 来場者限定オファーや営業トークへのつなぎ(アクション誘導)
このように、「誰に何をどう伝えるか」を先に固めることで、伝わる構成が生まれます。
「足を止めてもらう」「記憶に残す」ためのフックの設計
展示会では、ほとんどの来場者が“途中から見る”“無音で見る”という特殊な環境下にあります。だからこそ、「どこから見ても伝わる」仕掛けが必要です。
たとえば…
- 動画冒頭で問いかける:「◯◯のコスト、下げられずに困っていませんか?」
- テロップで要点を簡潔に示す:「初期費用ゼロで導入可能」
- 映像やアイコンで直感的に理解できる設計にする
1秒でも早く興味を引き、「あれ、なんだろう?」と足を止めてもらえるよう、最初の5秒間にフックを置くのが鉄則です。
ターゲット別おすすめ構成パターン
実際のターゲット別に、構成のパターンを簡単に紹介します。
■ 新規顧客向け(サービスの認知・理解が目的)
- 業界共通の課題(共感)
- 自社のソリューション(概要)
- 他社との違いや導入実績(差別化)
- 展示会限定オファー・資料請求の誘導
▶ポイント:まず「自分ごと化」させ、次に「価値」を伝え、最後に行動を促す
■ 既存顧客・パートナー向け(関係性の深化が目的)
- 自社の新たな取り組み・アップデート
- 今後のビジョンや市場への提案
- 過去事例や連携事例の紹介
- 来場者へのメッセージ・お礼
▶ポイント:理解がある前提で、「信頼の強化」や「未来への期待づくり」を意識
3. よくある疑問③:「いくらくらいかかるの?予算感は?」
動画制作で避けて通れないのが「予算」の話です。展示会向け動画は、内容や構成によって金額が大きく変わるため、「いくらが相場」と一概には言えませんが、
ここでは、ざっくり3つの予算帯で、できること・難しいことを整理してみます。
~30万円:社内完結/編集中心でシンプルに
- 社内で撮影した素材を編集する
- 撮影なしでテロップ+素材映像で構成する
- モーショングラフィックも簡易的なものに限定
▶ポイント:コストを抑えたい場合、「何を伝えるか」に集中し、演出や世界観は最低限にするのが現実的です。
50万円前後:スタンダードな構成と撮影/購入素材をベースとしたモーショングラフィックス
- 半日〜1日の撮影が可能(インタビュー/工場など)
- モーションやテロップ演出で表現に工夫を
- 構成提案・仮編集チェックなど基本的なフローを含む
- 購入素材をベースとしたモーショングラフィックス/あのメーション動画
▶ポイント:情報の分かりやすさと、伝わる演出のバランスをとれる価格帯。初めての展示会で、ある程度しっかり作りたい企業に向いています。
100万円〜:世界観の表現・ブランディング重視
- 数日かけた撮影や複数ロケーション対応
- 3DCGや高品質なアニメーション制作
- 映像の世界観づくりやBGM・ナレーションへのこだわり
▶ポイント:印象に残る映像体験やブランド価値の訴求に向いた設計。展示会後の営業活用やWeb公開も想定して投資するケースもあります。
予算に応じた優先順位の考え方
限られた予算で制作する場合、「どこに重点を置くか」を明確にしましょう。
- 来場者に“内容を正確に伝えたい” → テロップと構成重視
- “印象に残るビジュアル”で差別化したい → ビジュアル演出重視
- 来場者、ターゲットとの会話のきっかけにしたい→キーワードと動画のテンポを重視
目的に応じて、何を削ってもいいのか、何は絶対に削れないのかを整理することが、コストパフォーマンスの高い動画づくりに繋がります。
4. よくある疑問④:「納期・スケジュールはどれくらい必要?」
展示会の準備は、ブース設営、印刷物の手配、スタッフの調整…と、やることが山積みです。そのなかで動画制作をスムーズに進めるためには、スケジュールの逆算設計が不可欠です。
展示会から逆算したスケジュールの一例
- 展示会3ヶ月前:動画活用の検討、相談・発注先の選定
- 2ヶ月前:構成案決定、撮影実施
- 1ヶ月前:初稿確認〜修正対応
- 2週間前:完成データ納品、会場での動作確認
▶ポイント:最低でも1.5〜2ヶ月は確保したいところです。内容がシンプルであっても、社内確認・調整のためのスケジュールの余白を作っておくことでイレギュラーなトラブルが起きた際の対応なども可能になります。
撮影の有無で変わる制作期間
- 撮影なし(編集中心):2〜3週間でも対応可能なケースあり
- 撮影あり:スケジュール調整+編集作業で**最低1ヶ月〜**は必要
特に撮影を伴う場合は、社内調整や出演者の準備時間も見越して動く必要があるため、想定以上に時間がかかります。
“直前になって焦る”を防ぐために
- 「映像は後でいいや」と後回しにされがち
- 実はブースの中で“最も目立つ要素”になり得る
だからこそ、動画は展示会準備の“初期段階”で計画に組み込むのが理想です。特に、動画を放映するのであればモニターをどこに、どのように設置するのかも非常に銃用です。せっかく動画を制作しても来場者の目に触れにくい場所での放映になると「賑やかし」としての役割に終始してしまいます。
5. よくある疑問⑤:「動画会社に何をどう頼めばいいの?」
初めて外注する場合、「何を伝えればいいのか分からない」という声をよく聞きます。ここでは、制作会社に相談・見積もり依頼をする際に用意しておくとスムーズな情報をまとめました。
相談時に伝えたい基本情報
- 展示会の名称・開催時期・出展目的
- ターゲット像(業種・役職・抱える課題)
- ブースの規模やモニター配置
- 活用目的(集客/説明補助/印象づけ など)
これらが整理されていると、制作会社も構成や演出の方向性を提案しやすくなります。
情報整理の方法については、下記をご参考ください。

見積依頼時の注意点
- 修正回数はどこまで含まれているか?
- **納品形式(mp4, movなど)**に希望はあるか?
- 使用権/二次利用に制限はあるか?
▶あとから「それは追加料金です」とならないためにも、契約前に確認しておきましょう。
初めての外注でありがちな落とし穴
- 目的が曖昧なまま「とりあえず映像をお願い」
- 画面サイズやループ形式を伝え忘れ、会場でトラブル
- 社内確認が想定より時間がかかり、スケジュールが逼迫
▶対策は、「最初の打ち合わせで不安なことは全部聞く」。そして、会場での使い方も含めて相談できる会社を選ぶのが安心です。
6.動画制作の外注に失敗しないための4つのポイント
動画制作を外注した経験のある人の中には、なんらかの理由で「失敗した」「上手くいかなかった」と感じている方がいます。筆者もお客様からそのような相談を受けたことが何度かあります。
詳細は下記の記事にまとめていますが、ここでは失敗しないために重要な4つのポイントをご紹介します。

適切な制作会社を選ぶ
もちろん発注側としてもそれを強く望んでいると思いますが、
ここで端的にお伝えしたいのは、「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点をもってみることです。
筆者が動画制作に携わり始めた10年ほど前とくらべると動画制作会社は格段に増えました。そしてどの会社も甲乙つけがたいほど豊富な制作実績を持っています。(弊社はまだ会社としての実績は少ないですが…)
その中で何をポイントに選ぶか?の1つのポイントが上記の「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点です。
詳しくは下記の記事にまとめていますが、端的にお伝えすると、

- 優秀な営業担当は、優秀なプロデューサー、優秀なクリエイターをアサインできる
- 優秀な営業担当は、無用なトラブルを避けてくれる
- 優秀な営業担当は、コミュニケーションがスムーズ
という3点です。「絶対この会社がいい!」と思える会社が見つからず悩むことがあればぜひ参考にしてみてください。
そしてもし悩むようであれば、ぜひ筆者にもご相談ください。
スケジュールに余裕を持つ

基本的なことではありますが、何らかの理由で急いで制作を進めなければならないケースもあります。そのような場合、
- 人的なリソースを確保するために通常スケジュールでの進行よりもお金がかかる
- 急ぐ分、準備・確認に通常より時間を割くことができず何らかのトラブルが起きる可能性が高くなる
…というリスクがあります。
会社によっては、短納期でも費用を抑えて制作してくれる会社もあるかもしれませんがそれでもスケジュールを短縮するということは、どこかでなにかを犠牲にせざるを得ません。
もちろん、通常スケジュールよりもトラブルが起きる可能性が高まるというだけで、「必ずトラブルになる」「失敗する」わけではありません。制作に慣れているプロが進行する以上、トラブルの種は極力排除し最大限問題なく進行できるよう尽力することは間違いありません。
ただ、それでも想定外のトラブルに見舞われることもあるのが動画をはじめ、クリエイティブ制作の現場です。
だからこそ、できる限りスケジュールには余裕を持つことを強くおすすめします。
制作内容によって変動しますが、会社紹介動画であれば、最低2ヶ月。できれば3ヶ月ほど制作スケジュールが確保できると良いでしょう。
上記はあくまでも「制作期間」なので、制作会社を選んだり正式に発注するまでのリードタイムがどれくらい必要になるかについては、自社の稟議や予算申請のフローについて事前に把握しておく必要があります。
完成イメージをできるだけ具体的にする
いざ、動画制作をスタートする際には制作会社側からどのような動画が完成する予定であるかは絵コンテやシナリオなどの資料を用いて説明があるはずです。
動画制作に慣れていれば、そのような資料で具体的なイメージを持つことができますが、初めての場合にはそれでもイメージが難しいこともあるでしょう。
そのような場合には、遠慮なく制作会社側に質問してイメージの具体化に努めましょう。
制作過程で完成イメージの認識の相違などのズレが生じてしまうと、軌道修正には時間とコストがかかってしまいます。
社内調整を怠らない
発注側の企業の担当者の方の役割の1つが、自社内のステークホルダーとの共通認識の形成です。
- こんな目的でこんな動画を制作します。
- これが完成イメージです。
- いつころ完成予定です。
- このタイミングでシナリオや動画を確認して、いつまでにフィードバックしなければなりません
…などなど、動画制作の背景や前提、クリエイティブイメージ、スケジュールなどについて関係者としっかりと「握る」ことができていないと、後になって「どんでん返し」が起きることは珍しいことではありません。
特に、動画制作について最終的なOKを出せる決裁権者とのすり合わせは重要です。
8. まとめ:展示会動画を“効果の出る武器”に変えるために
展示会で動画を活用する企業は増えていますが、「成果を出している企業」は多いとは言えません。
その違いを生むのは、「よくある疑問」をひとつひとつ丁寧に解消しながら、動画の役割を正しく設計できているかどうかです。
- 動画は「足を止める」「記憶に残す」ための強力な装置
- 予算・納期・目的に応じた優先順位を整理する
- 制作会社との連携で“現場で機能する動画”をつくる
caseでは、展示会が初めての企業様にもゼロから丁寧に並走しています。
- そもそも動画が必要かどうかも含めて相談したい
- 展示会テーマやブース設計に合った企画を提案してほしい
- 限られた予算でも最大限に成果を出せる方法を探したい
──そんなご相談も歓迎です。
展示会で「見てもらえる・覚えてもらえる」動画づくり、ぜひ私たちにお任せください。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
是非、下のボタンからお気軽にお問い合わせください。