「展示会で流す動画を作りたいが、費用がいくらかかるか分からない」「見積もりを取ったが、その金額が適正なのか判断できない」――。本記事は、そんなお悩みを持つ担当者様に向けて、展示会動画の費用相場に関するあらゆる情報を網羅した完全ガイドです。
この記事の要点(結論)

- 展示会動画の費用は、モーショングラフィックス中心なら30万円~、実写撮影を含む場合は60万円~が一般的な価格帯の目安です。
- 費用は「企画構成費+制作基本費+変動費+オプション費」で決まり、動画の尺、表現のスタイル(実写かCGか)、撮影の有無が価格を大きく左右します。
- よくある失敗は、修正回数の超過、仕様変更による追加費用です。契約前に修正範囲や回数を明確にすることが重要です。
- コストを抑える鍵は、既存素材の活用と、依頼内容を事前に固めること。記事内のチェックリストとテンプレートを活用し、スムーズな発注準備を進めましょう。
展示会動画の費用相場(料金表)
まず結論として、展示会動画の費用相場は、動画の「尺(長さ)」と「表現スタイル」の組み合わせで大きく変わります。以下は、2025年現在の一般的な料金体系の目安です。
表現スタイル | 15秒 | 60秒 | 120秒 |
---|---|---|---|
モーショングラフィックス中心 | 200,000円~500,000円 | 300,000円~700,000円 | 800,000円~1,500,000円 |
実写撮影あり(撮影1日・2カメ・照明/音声あり) | 400,000円~800,000円 | 600,000円~1,200,000円 | 800,000円~1,800,000円 |
高度な3DCG・シミュレーション | 上記に+300,000円~2,000,000円(内容により大きく変動) | ||
特急料金(短納期) | 通常制作費の+20%~40%が目安 |
※上記はすべて税別の目安価格です。制作会社や要件によって変動します。
動画制作費用の内訳と算出ロジック
動画制作の費用は、複数の工程にかかる人件費や諸経費を積み上げて算出されます。一般的な費用の内訳は以下の式で表せます。
総額 = 進行管理費+企画構成費 +ディレクション費 + 編集費 + オプション費 +etc
それぞれの項目に含まれる代表的な作業と、単価の目安は以下の通りです。
項目 | 内容 | 単価目安(税別) |
---|---|---|
ディレクション費 | 企画通りに、撮影・デザイン制作・編集などを監督 | 50,000円~350,000円 |
進行管理費 | プロジェクト全体の進行管理、品質管理 ※全体の総額によって変動します | 50,000円~350,000円 |
企画・構成台本費 | 動画の目的設定、構成案、絵コンテ、ナレーション原稿作成 | 80,000円~200,000円 |
撮影費 | ディレクター、カメラマン、照明、音声、アシスタントなど | 100,000円~500,000円/日 |
編集費 | カット編集、テロップ、BGM・効果音挿入 | 80,000円~200,000円 |
モーショングラフィックス費 | 図形やテキスト、イラストに動きをつけるアニメーション制作 | 150,000円~400,000円 |
ナレーション費 | プロのナレーター手配、スタジオ収録、編集 | 30,000円~80,000円+スタジオ代 |
BGM・効果音(SFX)費 | 有料ライセンス楽曲・効果音の購入費用 | 5,000円~30,000円/曲 |
アスペクト比追加 | 16:9で制作した動画を9:16(縦型)などに変換 | 20,000円~50,000円(書き出しのみ)制作費の+10~30%(再編集あり) |
【シナリオ別】展示会動画の見積もりサンプル3選

ここでは、よくある3つのシナリオを基に見積もりサンプルを作成しました。自社の状況と照らし合わせ、予算感の参考にしてください。
A.【予算35~60万円】15秒・モーショングラフィックス中心・無音ループ動画
ブース前で来場者の足を止めるための、アイキャッチ目的の短い動画です。無音・ループ再生を前提とし、動きと大きなテロップで視覚的に訴求します。
項目 | 金額(税別) | 備考 |
---|---|---|
進行管理費 | 50,000円 | プロジェクトの進行管理 |
企画構成費 | 80,000円 | シンプルな構成案・絵コンテ |
ディレクション費 | 50,000円 | 企画通り制作するためのディレクション |
モーショングラフィックス制作費 | 200,000円 | 既存ロゴ、イラスト素材を活用 |
BGM・効果音費 | 0円 | 無音のため不要 |
合計 | 380,000円 | コストを抑えた場合の目安 |
【コスト感の根拠】
撮影がなく、ナレーションや複雑な編集も不要なため、費用はモーショングラフィックス制作費が中心。既存のイラストやデザインデータを流用することで、さらにコストを抑えることが可能です。
【削れる/削れないポイント】企画構成を自社で固め、素材をすべて提供すれば企画費を削減できる場合があります。一方、アニメーションのクオリティを担保する制作費は削れません。
参考動画
※こちらの動画が、上記の見積りで制作されたということではありません。
B.【予算80~130万円】実写+MG・サイネージ縦横2比率対応
製品のデモや利用シーンを実写で見せつつ、モーショングラフィックスで特徴を補足する動画。横型モニターと縦型サイネージの両方で流すことを想定しています。
項目 | 金額(税別) | 備考 |
---|---|---|
進行管理費 | 150,000円 | プロジェクトの進行管理 |
企画構成費 | 150,000円 | 実写とCGを組み合わせた構成 |
ディレクション費 | 100,000円 | 企画通り撮影・制作するためのディレクション |
撮影費(1日) | 300,000円 | カメラマン、照明、音声 |
編集費 | 150,000円 | カット編集、テロップ |
モーショングラフィックス制作費 | 150,000円 | インフォグラフィックなど |
BGM・効果音費 | 20,000円 | ライセンス楽曲 |
アスペクト比追加(再編集) | 100,000円 | |
合計 | 1,120,000円 | 一般的な構成での目安 |
【コスト感の根拠】
1日の撮影費に加え、2つのアスペクト比に対応するための再編集費用が発生します。縦横比が違うと、テロップの位置やレイアウトの調整が必須になるため、単純な書き出しだけでは済まないケースがほとんどです。
【削れる/削れないポイント】
撮影場所を自社施設にする、出演者を社員にすることで撮影費を抑えられます。一方で、撮影スタッフの人件費や、クオリティを担保する編集費は削減が困難です。
参考動画
※こちらの動画が、上記の見積りで制作されたということではありません。
C.【予算110~180万円】海外向け英語版(プロナレーション・英語字幕)
海外の展示会や、インバウンド向けに製品・サービスの魅力を伝えるための動画。ネイティブのナレーターを起用し、英語字幕も正確に表示します。
項目 | 金額(税別) | 備考 |
---|---|---|
進行管理費 | 150,000円 | プロジェクトの進行管理 |
企画構成費 | 200,000円 | グローバル向けの構成 |
ディレクション費 | 150,000円 | 企画通り制作するためのディレクション |
撮影費(1日) | 350,000円 | 製品撮影など |
編集費 | 200,000円 | |
モーショングラフィックス制作費 | 200,000円 | |
ナレーション費(英語) | 150,000円 | ネイティブナレーター、スタジオ代 |
翻訳・字幕制作費 | 50,000円 | 翻訳、タイムコード調整 |
BGM・効果音費 | 20,000円 | |
合計 | 1,470,000円 | 多言語対応の場合の目安 |
【コスト感の根拠】
通常の制作費に加え、翻訳費、ネイティブナレーターの費用、スタジオ収録費、字幕制作費が追加されます。特にナレーターのランクや言語によって費用は大きく変動します。
【削れる/削れないポイント】
AI音声や機械翻訳を使えば費用を抑えられますが、企業の信頼性に関わるため、プロへの依頼を推奨します。撮影が不要な場合は、その分の費用を削減できます。
参考動画
※こちらの動画が、上記の見積りで制作されたということではありません。
見積もりで要注意!追加費用が発生しやすいポイント
「最初の見積もりから、最終的な請求額が大幅に増えてしまった」という事態を避けるため、追加費用が発生しやすいポイントを事前に把握しておきましょう。
- 規定回数を超える修正依頼:多くの制作会社では修正回数を「2回まで」などと定めています。3回目以降や、一度FIXした内容の大幅な変更は追加費用となるのが一般的です。
- 後からの仕様変更:「やっぱりナレーションを入れたい」「縦型も必要になった」など、制作開始後の仕様変更は、追加の作業費や再編集費が発生します。
- 短納期(特急)対応:通常より短い納期を希望する場合、スタッフの追加アサインや残業稼働が必要になるため、20~40%程度の特急料金がかかることがあります。
- 素材の追加・差し替え:制作途中で使用する写真やイラスト、BGMなどを追加・変更する場合、素材の購入費や差し替え作業費が発生します。
- 権利処理の追加:契約時に定めた利用範囲(期間や媒体)を超えて動画を使用する場合、ライセンスの再契約費用が必要になることがあります。
- 撮影の延長・追加:当日のトラブルや天候、追加の撮影要望により、予定していた時間を超えると延長料金が発生します。
品質を落とさず費用を抑える7つの打ち手

単に安い制作会社を選ぶだけでは、品質が伴わない可能性があります。ここでは、動画のクオリティを維持しつつ、賢くコストを削減するための具体的な方法をご紹介します。
やるべきこと
- 既存アセットの棚卸し:過去に制作した動画、製品の3Dデータ、パンフレット用のイラストなど、流用できる素材がないか確認しましょう。素材を提供することで、制作費を抑えられます。
- 動画の仕様(尺・比率)を早期にFIXする:制作開始前に、動画の長さや使用するモニターのアスペクト比を確定させましょう。後からの変更が最も大きな追加費用につながります。
- 構成案やテロップ文言を自社で準備する:動画の構成案や、表示するテキスト(テロップ)の原稿を可能な範囲で作成・確定させておくことで、企画構成費や修正工数を削減できます。
- 修正指示(FB)はまとめて一度で行う:関係者のレビューや修正指示は、担当者が責任を持って一つに集約してから制作会社に伝えましょう。指示が分散すると、手戻りや混乱の原因になります。
避けるべきこと
- むやみな撮影:「念のため」で撮影カットを増やすと、撮影時間や編集工数が増大します。絵コンテの段階で必要なカットを厳選しましょう。
- 仕様の「後出し」:「完成してから縦型も欲しくなった」は最もコストがかかるパターンです。企画段階で必要な仕様をすべて洗い出しましょう。
- 担当者以外からの修正指示:複数の部署や役職者から直接、制作会社へ指示が飛ぶと、内容が矛盾したり、プロジェクトが迷走したりする原因になります。
【コピペOK】見積もり依頼時のチェックリスト
制作会社に正確な見積もりを出してもらうためには、依頼内容を具体的に伝えることが不可欠です。以下のチェックリストを参考に、情報を整理してみてください。
- 動画の目的とKPI:(例:ブースへの集客、製品の理解促進、商談化率の向上)
- 想定尺(長さ):(例:30秒程度)
- 表現スタイル:(例:実写ベースに、一部モーショングラフィックスを加えたい)
- アスペクト比:(例:16:9の横型と、9:16の縦型サイネージ用の2種類)
- 希望納期:(例:展示会初日の1週間前までに完パケ希望)
- 予算感:(例:100万円前後)
- 修正回数の確認:(例:基本料金に含まれる修正回数は何回までか)
- 利用範囲:(例:展示会での利用のほか、WebサイトやSNSでも1年間利用したい)
- 音声の仕様:(無音ループか、BGMありか)
- ナレーションの有無:(有りの場合、言語や性別、希望のトーンなど)
- 字幕の有無:(有りの場合、言語)
- 素材提供の有無:(例:製品ロゴのaiデータ、パンフレットのPDFデータを提供可能)
- 社内の承認フロー:(例:担当者→部長→役員の3段階。各承認に3営業日ほどかかる見込み)
契約・権利・運用の注意点
費用面だけでなく、契約内容や権利関係の確認もトラブルを避けるために重要です。特に以下の点は必ず確認しましょう。
- 修正回数と範囲の明文化:「軽微な修正2回まで」など、回数だけでなく、どの程度の修正までが基本料金に含まれるのかを書面で確認しましょう。
- 素材ライセンスの範囲:BGMやストックフォト、フォントなどの素材が、どこまで(媒体、期間、地域)利用可能なのか、二次利用は可能かを確認します。
- 著作権の帰属:制作した動画の著作権(編集データを含む)が、発注側と制作会社のどちらに帰属するのかを契約書で明確にしておきましょう。
- 元データの納品:将来的に自社で再編集する可能性がある場合、編集プロジェクトファイル(Adobe After EffectsやPremiere Proのデータなど)が納品されるか、またその際の費用はいくらかを確認します。
生成AIの活用による費用最適化の可能性
近年、生成AIの進化により、動画制作の一部工程を効率化し、費用を抑えられる可能性が出てきました。ただし、現時点ではクオリティや権利面での課題も多く、全面的な活用には注意が必要です。
- 活用できる可能性のある工程
- 企画の壁打ち、構成案のたたき台作成
- 絵コンテのラフ案生成
- テロップやナレーション原稿の草案作成
- 外国語翻訳の第一稿作成
- 活用における注意点
- 権利関係:AIの生成物が、既存の著作権を侵害していないか、法的な確認が不可欠です。
- 品質と信頼性:AIが生成した情報は、必ずしも正確ではありません。最終的には人間のプロフェッショナルによるファクトチェックとリライトが必須です。
- 機密情報:自社の未公開情報や顧客情報を、生成AIのプロンプトに入力することは絶対に避けるべきです。
展示会動画の費用に関するよくある質問

- とにかく安く!展示会動画は最安でいくらから作れますか?
-
既存のテンプレートを使い、モーショングラフィックスのみで構成するシンプルな15秒程度の動画であれば、15万円~20万円(税別)程度から対応可能な場合があります。ただし、オリジナリティや高い訴求力を求める場合は、最低でも30万円以上の予算を見ておくことを推奨します。
- 短納期で依頼する場合、追加費用はどれくらいかかりますか?
-
制作会社や納期までの期間によりますが、通常の制作費に対して20%~40%程度の特急料金が加算されるのが一般的です。例えば、通常1.5ヶ月かかる案件を3週間で対応する場合などが該当します。人員の再配置や時間外労働が発生するため、その分の費用が上乗せされます。
- 英語や中国語など、多言語対応の費用感を教えてください。
-
1言語追加あたり、10万円~20万円程度の追加費用が目安です。内訳は、①ネイティブによる翻訳費(5万円~)、②ナレーター費用+スタジオ代(5万円~)、③字幕制作・焼き付け費(2万円~)などです。翻訳の専門性やナレーターのランクによって費用は変動します。
- 横型と縦型の2比率を制作する場合の費用は?
-
企画段階から両方の比率を想定して制作する場合、通常の制作費に加えて「再編集費用」として総額の10%~30%が追加されるのが一般的です。単に映像を切り取るだけでなく、テロップの位置やデザイン、レイアウトを各比率に最適化する必要があるためです。完成後に依頼すると、さらに割高になる可能性があります。
- 社内確認に時間がかかり、スケジュールが遅延した場合、追加費用はかかりますか?
-
契約内容によりますが、遅延によって制作会社側のスタッフの再調整や、他の案件との兼ね合いで非稼働期間が発生した場合、「待機費用」や「スケジュール変更手数料」を請求される可能性があります。契約時に、承認遅延に関する規定(例:FBが予定より5営業日以上遅れた場合、納期を再調整し、追加費用が発生する場合がある)を確認しておくことが重要です。
まとめ:費用対効果の高い展示会動画を実現するために
展示会動画の費用は、決して安くはありません。しかし、目的を明確にし、計画的に準備を進めることで、費用を最適化し、投資対効果を最大化することは十分に可能です。最後に、費用最適化のためのチェックリストをまとめます。
- 動画の目的(集客、理解促進など)は明確か?
- 既存の動画やデザイン素材を流用できないか?
- 依頼前に、動画の尺・比率・仕様は確定しているか?
- 構成案やテロップ原稿は、可能な限り自社で準備したか?
- 見積もりに、修正回数や権利範囲は明記されているか?
- 相見積もりを取り、各社の内訳を比較検討したか?
- 社内の承認フローと期間を制作会社に共有したか?
- 追加費用が発生する条件を契約前に確認したか?
- 担当者を一人に定め、修正指示を集約する体制は整っているか?
- 「とりあえず」の撮影や仕様変更を避け、計画的に進められているか?
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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