弊社は動画制作会社なので、当然に相見積りや企画コンペなどに参加させていただくことが多々あります。各社が全身全霊で企画を考え、見積りを切り詰めて提案するので、普通に考えればそこで選ばれた会社は「1番素晴らしい会社」のように思えます。
一方で、お声がけ頂く際に「前に依頼した会社のアウトプット(もしくは制作進行)」に満足できなかったという声をお聞きすることも多く、「企画コンペ」という会社の選び方が果たしてベストなのか?とふと考えました。
企画コンペでは測れない、動画制作にもとめられる能力①
コンペという舞台は、短い時間で“物語”を最大化する装置です。
構成を軽やかに、スライドを見栄え良く、響きの良い言葉で。
動画制作を生業とする以上、「ターゲットに伝えたい内容を伝える」プレゼン資料はもちろんそれ自体がその会社の能力を示す1つの材料になります。
けれど、制作はそこから始まる長距離走で、光るのはプレゼンの瞬発力ではなく、2〜5か月に及ぶ制作期間をお客様とともに走り抜ける持久力です。
ここに、見えにくい分断があるように思います。
プレゼンは“作品”として完結できますが、制作は“関係”として続くのです。
企画の根幹に触れる修正指示、社内事情による方針の揺れなど、——全身全霊をかけた企画がともすれば「思いつきでは…?」とも思えるような理由で変更を余儀なくされるというのはよくあることです。
他にも「9:16も欲しいかもしれない」「説明会の尺を15秒だけ延ばしたい」「ナレーションは男性から女性に変更したい」。よくある変更ですが、工程の負荷はまったく“よくある”で済みません。
ここで重要なのは、練られたアイディアではなく、優れたコミュニケーション能力とそれによる合意形成の速度です。
企画コンペでは測れない、動画制作にもとめられる能力②
さらに、コンペは「何ができるか」を測るのに向いていますが、「どのように一緒にやれるか」を測るのは得意ではありません。
たとえば次の三つは、プレゼンでは評価しにくい項目ではないでしょうか。
- 言い換え力:曖昧な要望を、仕様や工数に翻訳する力。
- 段取りの透明性:承認者・締切・責任の線引きを、最初に明示できるか。
- 小さな躓きへの復元力:撮影延期、素材遅延、法務差し戻しに対して迅速丁寧で「何もなかった」ように進行する能力。
他にも例を上げればキリがありません。
企画コンペの良さ
もちろん、コンペには良い面もあります。
同じだけの情報を伝えたうえで、それぞれの会社が「どれだけ汲み取り」「どれだけ精査し」「その結果どれだけの精度の企画を立案できるか」を測ることができればあるいは、コンペ目的は達成されたと言えるのかもしれません。
最後に
ただ、それでも納得の行かない動画制作になるケースが多々生まれてしまっていることもやはり事実です。
「コンペは間違いだ」と言いたいわけではありません。
それでも、コンペを行い、意思決定するまでのプロセスの中で削ぎ落とされたものの中に、動画制作における重要な要素が隠れているのではないかと思ってしまうのです。
