「100万円の予算で、どんな動画が作れるのか具体的なイメージが湧かない」「見積もり前に、実現可能な選択肢を把握しておきたい」「社内稟議を通すために、同じ予算帯の事例を知りたい」──BtoB企業のマーケティング担当者にとって、100万円という予算での動画制作は、選択肢の幅と実現可能性を見極める重要な検討段階です。
本記事では、100万円で制作可能な動画のバリエーションを、サービス紹介・会社紹介・採用動画の3つの切り口から、具体的な制作条件とともに解説します。
導入|100万円でできる「現実的な選択肢」をまず認識する
100万円という予算は、BtoB動画制作において「質を担保しながら、複数用途に対応できる」ラインです。「なんでもできる!」という予算感とは言えませんが、「一定の条件の中で、比較的柔軟に対応可能」である予算感だと言えます。
例えば、実写で複数日にの撮影をする、スタジオを借りて撮影するなども可能です。また、モーショングラフィックスであれば1−2分であれば一般的なクオリティは十分に実現できます。
重要なのは、「何を伝えたいのか」「誰に届けたいのか」を明確にした上で、最適なバリエーションを選ぶことです。以下では、代表的な3つの動画タイプについて、それぞれの特徴と制作条件を整理します。
100万円でできる動画のバリエーション
サービス紹介(SaaS/機能訴求向け)
目的/KPI・評価軸:サービスの機能や導入効果をわかりやすく伝え、問い合わせや資料請求につなげます。評価指標は、動画視聴完了率、サイト滞在時間、問い合わせ件数などです。また、営業ツールとして活用されるケースもあります。
おすすめ尺・比率:60〜120秒前後、16:9(横型)を基本とし、SNS広告やモバイル向けに9:16(縦型)への再編集にも対応可能です。
標準制作期間:6〜8週間(企画・構成から納品まで)
おすすめ構成要素:
- 課題提示:現状の具体的な課題を明確に示す
- 解決策の提案:サービスがどのように課題を解決するか
- 機能説明:主要機能を画面キャプチャやMGで視覚的に説明
- 導入効果:導入後の変化や成果を数値やグラフで示す
- CTA(Call To Action):お問い合わせ/資料請求への誘導
活用先/向いているケース:Webサイトのトップ/サービス紹介ページ、展示会ブース、SNS広告など各種媒体で活用できます。特に、SaaSや無形サービスなど視覚的に伝わりにくい商材に適しています。
会社紹介(信頼・理解促進)
目的/KPI・評価軸:企業の理念や事業内容、強みを伝え、取引先や求職者の信頼を獲得することが目的です。評価指標は、企業サイトの滞在時間、採用ページへの遷移率、問い合わせ数などが挙げられますが、会社紹介動画の場合は汎用性が高く様々なシーンで活用されるためKPIや評価軸などは設定されないケースも多くあります。
おすすめ尺・比率:120〜240秒、16:9(横型)が基本です。
標準制作期間:5〜8週間(企画・構成から納品まで。実写撮影を含む場合)
おすすめ構成要素:
- 企業理念・ビジョン:企業が目指す方向性を明確に示す
- 事業内容:主要事業や製品・サービスをわかりやすく紹介
- 強み・差別化ポイント:競合にはない技術力や実績を具体的に提示
- オフィスや製造現場の映像:実写で企業の雰囲気を伝える
- 代表メッセージ:代表者のインタビューで信頼感を醸成
活用先/向いているケース:コーポレートサイトのトップ、採用ページ、展示会ブース、商談前後の共有など、初めて企業を知る相手との接点で活用します。特に、製造業や技術系企業など、設備や技術力を視覚的に伝えたい場合に適しています。
注意点:実写を含む場合は、撮影日の調整や出演者のスケジュール確保に留意が必要です。代表や社員の出演は事前の合意形成を行いましょう。
採用動画(カルチャー/職種訴求)
目的/KPI・評価軸:求職者に企業カルチャーや働く環境をリアルに伝え、応募の質を高めます。評価指標は、採用ページの滞在時間、動画視聴完了率、エントリー数などです。
おすすめ尺・比率:60〜180秒、16:9(横型)が基本です。新卒向けにSNSでの視聴を想定する場合は、9:16(縦型)への対応も可能です。
標準制作期間:6〜8週間(企画・構成から納品まで。実写撮影やインタビュー収録を含む場合)
おすすめ構成要素:
- 社員インタビュー:現場の声で、仕事のやりがい・成長実感を伝える
- 職場の雰囲気:オフィスやミーティングの様子を撮影し、働く環境を可視化
- 1日の流れ:特定の職種の1日を追い、具体的な業務イメージを提示
- 福利厚生・制度:働きやすさを支える制度やサポートを紹介
- 応募への誘導:採用サイトやエントリーフォームへのCTA
活用先/向いているケース:採用サイト、会社説明会、インターンシップ案内、SNS広告など、求職者との接点で活用します。特に、新卒や若手採用で企業の雰囲気を重視する層に有効です。
注意点:出演社員の選定や撮影スケジュールの調整に時間がかかる場合があります。インタビューは事前質問を用意しつつ、自然な発話を引き出すディレクションを行いましょう。
短納期でも破綻しない進め方

通常は、予算に制限がある一方で納期についても短期間となると、制作スケジュールが破綻してしまいトラブルにになる可能性が高いですが、以下の条件を満たすことで、スケジュールを短縮しながらクオリティを担保できる可能性が高まります。発注側企業の協力が不可欠になるため、もし短納期での制作を検討されている場合にはぜひご参考ください。
- 承認フローの一本化:承認の窓口を一人に絞り、意思決定を迅速化します。
- 素材の事前整理:ロゴデータ、製品写真、パンフレットPDFなど、必要素材を事前に準備します。
- 要件の凍結:企画段階で目的や構成を確定し、制作後の大きな変更を極力抑えます。
- 即レス体制:提出物へのフィードバックは即日〜1営業日以内が理想です。
- 撮影の簡略化:実写が必要な場合は、撮影場所を1箇所に絞り、出演者は社員を中心に最小構成で行います。
進め方チェックリスト
動画制作をスムーズに進めるための、発注前と制作中のチェックリストです。制作期間にかかわらず下記を事前に押さえていただくことで、よりスムーズな制作会社とのコミュニケーションが可能になります。コスパの高い動画制作を実現するためには、スムーズなコミュニケーションは不可欠です。ぜひご参考ください。
発注前
- ☐ 目的とKPIは明確ですか?達成目標と効果測定の指標を定義します。
- ☐ ターゲットは定義されていますか?誰に何を伝えるかを一文で言語化します。
- ☐ 使用媒体は確定していますか?Web/SNS/展示会など、使用シーンを決めます。
- ☐ 既存の素材は整理されていますか?ロゴ・写真・資料・UIキャプチャ等をリストアップします。
- ☐ 承認フローは整っていますか?最終決定権者とレビュー担当を明確にします。
制作中
- ☐ フィードバックは具体的ですか?例:「この部分の色を青にしてください」など、具体的に指示します。
- ☐ 修正指示は一本化されていますか?複数担当者が個別に指示を出さず、窓口を一人に絞ります。
- ☐ スケジュールは共有されていますか?制作会社と認識を合わせ、遅延リスクを早期に把握します。
標準スケジュール(4〜6週間)
100万円の予算での動画制作における、標準的なWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成)の簡略版です。
週 | 工程 | 主な作業内容 |
---|---|---|
1週目 | 要件定義・企画構成 | 目的・ターゲットの明確化、構成案の作成 |
2週目 | 絵コンテ・デザイン | 絵コンテの作成、デザインコンセプトの決定 |
3週目 | 撮影・素材制作 | 実写撮影、ナレーション収録、MG素材の制作 |
4週目 | 編集(初稿) | カット編集、テロップ挿入、BGM検討 |
5週目 | 修正・フィードバック | 初稿レビュー、修正指示、再編集 |
6週目 | 最終調整・納品 | MA(音声の最終調整)、カラーコレクション、データ納品 |
※プロジェクトの規模や内容により変動します。
見積もり依頼テンプレート
見積もり依頼時に伝えるべき項目テンプレートです。下記項目を埋めていただければOKですが、可能な範囲で補足できる情報を付加できるとベターです。
- 動画の目的:(例:新サービスの認知度向上、採用応募数の増加)
- ターゲット(想定視聴者):(例:製造業の購買担当者、新卒求職者)
- 主要メッセージ:(例:業務効率を改善する機能、働きやすい制度)
- 希望する動画の尺:(例:60〜90秒)
- 表現スタイル:(例:実写ベース、MG中心 など)
- 使用媒体:(例:Webサイト、展示会、SNS広告)
- 納品希望日:(例:YYYY年MM月DD日)
- 予算:(例:100万円(税別))
- 参考動画:(例:イメージに近い動画URL、自社既存素材)
FAQ(よくある質問)
- 100万円の範囲で「実写+MG」は対応できますか?
-
可能です。撮影は1日想定、MGは要点の図解に集中する構成が現実的です。
- 納期を4週間以内に短縮できますか?
-
可能です。承認フローの一本化/素材の事前共有/要件の早期確定などの条件をクリアすることで現実的になります。
- 画面UIが頻繁に変わるSaaSでも大丈夫?
-
画面の“型”や汎用的な動きで表現し、差し替えに強い設計にします。細部の静止画は差し替えやすいパーツ化を前提に作成します。
まとめ
100万円の予算で制作可能な動画として、サービス紹介・会社紹介・採用動画の3つをピックアップしましたが、それ以外の用途での制作ももちろん可能です。それぞれの目的に合わせて最適な構成と表現スタイルを選び、ことで100万円の予算でも高いクオリティを実現することができます。
株式会社caseでは、目的設計から撮影・編集まで、一気通貫でご支援します。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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